ドラマ版のデスノートが最終回を迎え完結したので、ちょと振り返ってみる。
当初は原作と余りに欠け反れている印象だったので大コケするんじゃないかと思っていたが、結局のところ最後まで見てしまったのは、主演の窪田君の演技力が抜きんでているところにあるんじゃないかと思った。

最終回の展開を簡単にまとめると

・総一郎の葬儀後、ニアの潜伏先の倉庫が判明し警察が踏み込む。そこにはニアの抹殺の為、月と魅神も同行した。
・倉庫から響く銃声の後、負傷した警察隊員が出てくるが、目撃したライトはそれがニアだと思い後をつける。
・隠れて後をついてきた魅神が陰でニアの名前をノートに書く。しかしそれは偽物にすり替えられていて、ニアは死なない。
・さらに警察が一斉に踏み込み、ライトに銃口を向ける。
・観念したライトは自分がキラだと白状する。そして案の定バカ田に撃たれる。
・最後は倉庫の炎上エンド。

最後まで強引なストーリーラインだった。最初はエルが0.1%と言っていたライトへの疑いはいつの間にか99%の確信になっていってしまった。
しかし、肝心な筋道や論理を期待していたが、それは全て”エルの勘”の話の域を出なかった。
その点、原作では、エルは死の直前までライトの様子を訝しんではいても、死の直前まで確信は持ってなかった。そして周囲もライトの潔白を何度もエルに訴えていた。

しかしドラマでは、総一郎はエルのビデオを見たことでライトがキラであるというエルの言葉を信じ、最後は対策室の全ての人間がそれに感化されていき、ライトを疑っていったのだ。

なんという乱暴な筋書きだろう。証拠はないけど疑わしいなど、まさに満員電車で痴漢の疑いをかけられた哀れなおっさんの冤罪レベルの話だ。

論理など存在しない、ただの魔女裁判だ。

ドラマについていちゃもんをつけること自体時間の無駄な行為ではあるが、さらに言いたいのはネロだ。

ネロのライトがキラだと暴きたい動機についてだが「ライトに負けを認めさせたい」ことらしい。

なんという私的な動機だろう。視聴者として全く共感できず、この言葉を聞いたときは拍子抜けしてしまった。

ライトは今の法に照らし合わせれば大量殺人者だ。しかし、それは「犯罪のない理想の社会」を作るという彼なりの信念、いわば正義があった。

しかし、ネロの動機のどこに正義があるのだろう。ただエルの無念を晴らそうとしただけであって、ライトの世界を革命するほどの主義主張が存在しないように思える。

正義の部分はネロに味方した日本警察が担っているにしても、薄い。
「犯罪の無い世の中を作りたいだけだ。お前たちにそれが出来るのか」
最後のライトの自白に対して、その場にいるものの誰もライトの問いかけに答えようと出来ていないのだ。だから模擬は「目を覚ましてくれ」とライトに言うしか出来ていない。

劇場版ではこのライトの問いかけに対して総一郎の言葉はとても納得できる答えになっている。
”人間は不完全だ。だからこそ法も不完全であるが、それは人間が長い歴史の中で積み上げ、不完全ながらも人類が選択してきた道である。だから法を守ることは尊く、一個人の信じる正義が人類全体を裁いてはならないのだ”
と、要約すればこんなことを答えている。
二つの正義に揺れる視聴者に対して、その答えを教えてくれているのだ。
劇場版には、頭の悪い自分にも納得できる筋の通った落としどころが用意されていた点はとても素晴らしく思える。

しかし、ドラマでは警察とライトのやったことは「お前の言うことわけわかんないから殺すわ」という段階で終わってしまっている。

ネロにしてみれば、本人の負けず嫌いが動機の全てであり、ライトに対して自身の正義や信念をぶつけることはない。

もはや世界平和のために戦く謎のヒーローを、ただ自分の好奇心だけで追い詰めて殺してしまったように、ネロの存在は薄っぺらいのだ。視聴者に対してネロにどうやって共感しろというのだ。

これでは野蛮な戦争と同じだ。お互いに正義を主張し合って、受け入れなければ相手を殺し、勝ったものだけが正義を主張できるという図式しかない。これが世の中の真実であるけど…

最後、銃弾に倒れ炎に焼かれていくライトの最後を哀れな犯罪者として描いていたが、それは憎むべき人類の敵が倒された瞬間なのか、この世の救世主が志半ばで倒れた瞬間なのか…何が正義で悪なのか、釈然としない結末が後味の悪さを引きずっている。
ファンタジーはファンタジーらしく、最後を現実に引き戻されたとしても、限りなく理想に近い現実の極限を見せて視聴者にカタルシスの残る終幕を見せて欲しかった。

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索